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あんしんのもり

障害基礎年金

収入サポート

障害によって十分に働くことができない人にとって障害基礎年金は主要な収入源となり得ます。

障害年金には、知的障害のように生まれながらにして障害をもっている人も受給できる障害基礎年金と、厚生年金に加入していた会社員等が加入期間中の病気やケガにより障害者となった場合に受給できる障害厚生年金の2種類ありますが、ここでは障害基礎年金について触れていきます。

受給要件(一部簡略化)

受給には以下を両方満たすことが必要です。

  1. 障害認定日(知的障害など生まれつきの場合は20歳)に、障害の程度が障害等級表の1級または2級に該当している
  2. 障害の原因である病気・ケガの初診日が20歳前である、または国民年金加入期間に初診日があり年金保険料を一定期間以上収めている
  • 1.にある障害等級表日本年金機構のホームページをご覧ください。ただ、知的障害については「精神の障害であって、前各号(Osaifu注記:身体障害の程度の基準)と同程度以上と認められる程度のもの」と書かれているだけです。障害等級表とは別に基準が定められていますので下記「障害等級」以下をご覧ください。
  • 知的障害は生まれつきの場合が多く、通常は誕生日が初診日となり上記 2.に該当します。
  • 知的障害を伴わない発達障害の場合で、初診日が20歳を過ぎている場合は、国民年金保険料を一定期間以上払っている必要があります。

年金額と障害等級

障害基礎年金年額(令和5年度)

  • 1級 993,750円
  • 2級 795,000円

    ※18歳以下の子がいる場合は1人につき228,700円、3人目以降は1人につき76,200円加算

  • 障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金には3級がありません。障害等級3級の人は障害基礎年金を受給することはできません。
  • 障害基礎年金2級の金額は老齢基礎年金の満額受給額と同じです。

障害等級

厚生労働省による知的障害と発達障害の障害等級の基準を見てみましょう。

漠然としていて分かりにくいですね。。。 実際の運用を次に見てみましょう。

障害年金認定のポイント

  • 申請した障害基礎年金が認定される上で最も重要なのは医師の「診断書」です。
  • 医師の診断書に記載される「日常生活能力の判定」の点数と「日常生活能力の程度」の評価を組み合わせたものが等級の目安とされます。
    • 「日常生活能力の判定」とは、食事、清潔保持、金銭管理・買い物、通院・服薬、意思疎通、危機対応、社会性について、1人で生活した場合にどの程度できるかを点数で判定するものです。
    • 「日常生活能力の程度」とは、日常生活全般における制限度合いを医師が5段階で評価するものです。
    • 「日常生活能力の判定」の点数と「日常生活能力の程度」の評価の組み合わせが等級の目安となります。
    • 目安をもとに、現在の病状・状態像、療養状況、生活環境、就労状況、その他の5つの分野を考慮して総合評価されます。
    • 就労していること自体が障害年金認定を妨げることはありません。仕事の内容や就労状況、受けている援助や職場での意思疎通の状況などを加味して総合評価されます。
  • 年金を申請できる20歳の時点で診断書を書いてもらえる医師を見つけておきましょう。18歳になるとかかりつけの小児科を卒業する場合がありますので注意が必要です。
  • 本人の状態・状況を正しく伝えられるように診断書のテンプレートに事前に目を通して、書いてもらう内容を整理・メモしておきましょう。
  • 書いてもらった診断書を見せてもらい、必要があれば訂正してもらいましょう。

診断書テンプレート
(日本年金機構のHPからダウンロードできます。知的障害の場合は「精神の障害者用診断書」を参照してください。)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/20140421-23.html

障害手帳と障害年金は別もの

  • 療育手帳の等級と、障害年金の等級は別ものです。
  • 療育手帳で重度であっても障害年金が1級とは限りません。逆もしかりです。
  • 療育手帳をもっていることは障害年金受給の要件にはなっていません。療育手帳があるからといって障害年金を受給できるわけでもありません。

年金の申請

  • 20歳になったら申請でき、翌月分から受給できます。
  • 障害認定日の前後3か月以内の診断書を添付します。生まれつきの知的障害の場合は誕生日前日が障害認定日となり、その日から申請(請求)できます。
  • 20歳になってすぐに申請しておかないと、誕生日の翌月分に遡って受給できない場合があるので早めに市町村の窓口で申請しましょう。

認定に不安がある場合

  • 年金のプロである社会保険労務士に申請を依頼することができます。年金専門の社会保険労務士がいいでしょう。
  • 費用は着手金が1~3万円、成功報酬として年金月額の1~3か月程度が相場です。

認定されなかったら

  • 「審査請求」と呼ばれる不服申し立てをすることができます。
  • そのような場合は社会保険労務士に依頼することで、認定されなかった理由・ポイントがわかり、受給につながることがあります。

年金の更新・等級変更

  • 障害年金には一度決定されると変更がない「永久認定」と、1~5年毎に更新が必要な「有期認定」があります。
  • 状態が大きく変わらない知的障害でも有期認定が多く見られます。有期認定の場合は、更新の度に医師の診断書を提出し都度認定されます。
  • 受給開始後に状態が変わり等級を変更したい場合は「額改定請求」を行うことができます。

所得制限

障害年金には基本的に所得制限がありませんが、20歳前に初診日がある場合、つまり一度も国民年金保険料を納付していない場合は所得制限が適用され、ある一定の所得を超えると翌年の障害基礎年金の全額あるいは半分が支給停止されます。

所得制限のポイント

  • 障害のある本人の所得のみが所得制限の対象となり、家族に扶養されている場合でも家族の所得は問われません。
  • 単身の場合、目安として給与収入が概ね年間600万円以上になると支給停止となるでしょう。
  • 障害年金は所得に含まれません。
  • 給与以外の所得が大きい場合や不動産売却などで一時的に大きな所得が生じた際は支給停止となる可能性があります。
  • 株式譲渡所得や株式等の配当所得については、総合課税ではなく申告分離課税や申告不要で源泉徴収を選択している場合は所得に含まれません。
  • 所得は毎年確認され、ある年の所得が制限額を上回った場合、翌年の10月から次の年の9月までの1年間支給停止となります。所得が制限以下になると次の年の10月から支給が再開されます。

障害年金生活者支援給付金

所得が一定基準額以下の年金受給者には、生活を支援するために年金生活者支援給付金が支給されます。

給付額

  • 障害年金1級: 6,425円(月額)
  • 障害年金2級: 5,140円(月額)

支給要件

以下をすべて満たしている人

  • 障害基礎年金を受給している
  • 前年の所得額(※1)が「4,721,000円+扶養親族の数×38万円(※2)」以下

    ※1 障害年金等の非課税収入は所得に含みません。

    ※2 扶養親族が70歳以上の場合は48万円、16歳以上23歳未満の場合は63万円

  • 所得制限については障害基礎年金の所得制限よりも少し緩いため、障害基礎年金を受給していればもらえることがほとんどです。
  • 申請しないともらえませんので、障害基礎年金を申請する際に合わせて申請しましょう。

障害年金を受給していても親の扶養に入れる

子どもが20歳になり障害基礎年金をもらい始めました。今まで通り親の扶養に入ることはできるのでしょうか?

要件を満たしていれば親の扶養に入ることができ、健康保険料や税金の節約につながります。

子の扶養には社会保険上(健康保険)の扶養と、税制上(所得税・住民税)の扶養の2種類あります。

同居は扶養の要件ではなく、子どもが一人暮らしやグループホームで暮らすなど別居していても要件を満たせば扶養に入ることができます。

健康保険上の扶養

健康保険の扶養に入るメリット

子どもが就労先で健康保険に加入できない場合は、親などの健康保険の扶養に入るか、国民健康保険に加入するかのどちらかが必要となります。

親が勤務先の健康保険に加入している場合、子どもを扶養家族とすることで追加の健康保険料を支払うことなく健康保険に加入できます。

健康保険の扶養に入る要件

被保険者である親が主として生計を維持している必要があるため、子どもの収入が多くないことが要件となります。

  • 同一世帯(同居)の場合:障害のある被扶養者(子ども)の年間収入が「180万円未満であって、かつ、被保険者(親)の年間収入の2分の1未満である」こと
     (参考:被扶養者に障害がなく60歳未満の場合は年間収入130万円未満)
  • 同一世帯でない(別居)の場合:障害のある被扶養者(子ども)の年間収入が「180万円未満であって、かつ、被保険者(親)からの援助(仕送り)による収入額より少ない」こと
     (参考:被扶養者に障害がなく60歳未満の場合は年間収入130万円未満)
    • 障害とは障害年金(障害厚生年金3級含む)を受給できる程度のことです。
    • 障害年金も収入に含まれます

税制上の扶養

税制上の扶養に入るメリット

子どもを扶養していると、親の課税所得を計算する際に、収入から扶養控除を引くことができるため課税所得を抑えることができ、親の所得税・住民税の低減につながり得ます。

また、障害のある人を扶養している場合は障害者控除も適用でき得るため、さらに税金を抑えることが可能です。

税制上の扶養の要件

「所得金額が一定以下の、生計を一にする親族」を扶養に入れることができます。

  • 年間の合計所得金額が48万円以下の人を扶養に入れることができます。
    (収入から各種控除を引いたものが所得となります。給与収入のみの場合は年間給与が103万円以下の場合に合計所得48万円以下となります。)
  • 障害年金は非課税所得なので合計所得金額には含みません。
  • 上場株式の配当所得や譲渡所得がある場合、証券会社の特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合、所得がいくらあっても合計所得金額に含まれません。
    • 配当と株の売買損失を合算するために申告分離課税を選択する場合や、配当控除を受けるために総合課税を選択した場合は合計所得金額に含まれます。
  • 別居の場合で「生計を一にする」とは、子どもに仕送りをしていて、休みなどに実家に帰ってくることがある、などの状態です。

まとめ

  • 要件を満たす人は20歳になると障害基礎年金を受給することができます。忘れず申請しましょう。
  • 障害基礎年金認定では医師の診断書が最も重視されます。診断書テンプレートに目を通し、医師に伝えるべきポイントを整理しておきましょう。
    • 18歳を過ぎると小児科を卒業することがあるので、20歳の時点で診断書を書いてもらえる医師を見つけておきましょう。
  • 認定に不安がある場合は、障害年金に精通した社会保険労務士に相談・申請依頼ができます。
  • 障害基礎年金の申請時に年金生活者支援給付金も申請しましょう。
  • 障害基礎年金を受給していても、収入等の要件を満たすと親の扶養に入れます。