義務教育が終わる中学校以降、障害がある子どもにはどのような進路の選択肢があるのでしょうか?
中学卒業後の高校などの進路は実に様々です。主なものだけでも以下のようにたくさんあります。
中学卒業後の主な進学先
公立・私立 高等学校 | 全日制 | 朝から夕方まで週5日。3年で卒業。 |
定時制 | もともとは夜に勉強する課程だったが現在は夜だけでなく、昼のみや、昼と夜など様々。授業時間・数によるが4年で卒業が多い。 | |
通信制 | 自宅学習がメインで、月数日~週5日など登校スタイルを選べる。高校卒業資格の取得可能。3~5年で卒業が多い。 | |
通信制高校のサポート校 | 連携している通信制高校の主に学習面をサポート。認可された学校ではなく塾のようなところ。 | |
公立・私立 特別支援学校 高等部/ 高等特別支援学校 | 知的障害の高等部では高校卒業資格は得られないが大学入学資格は得られる。 | |
高等専門学校 | いわゆる「高専」。主に工業系、商船系、情報系などの技術者を養成。5年で卒業し準学士となる。 | |
高等専修学校 | 職業を学ぶ学校。専門学校の高校版のようなもの。大学入学資格が得られる学校もある。 | |
フリースクール | 様々な理由で学校に行けない子どもに、学習活動、体験活動などの場を提供している民間施設。 |
特別支援学校 中学部・特別支援学級卒業後の進路
特別支援学校 中学部(知的障害)と、中学の特別支援学級卒業後の進路状況(2022年3月卒業)を見てみましょう。
高校等へ進学している人が多いことがわかります。
特別支援学校 中学部(知的障害)卒業後
中学の特別支援学級卒業後
高校等の進路別の特長と動向
進路ごとの特徴や最近の動向などを見てみましょう。
- 高等学校(全日制・定時制・通信制)での通級による指導が制度化されていますが、比較的新しい制度なのでまだそれほど多くはありません。
- 通信制高校は最近大きく変わってきています。いろいろな理由で通学できない、あるいはしたくない人もいます。通学が少ない分、自分のやりたいことに取り組めるので全日制の学校ではできないようなことをやっている人もいます。通信制高校を選ぶ理由は様々ですが、自分にあった高校の過ごし方がし易くなると言えるでしょう。最近ではN高校が有名ですね。
- 通信制高校では、単位を取得して卒業するために勉強の自己管理が求められます。それを手伝ってくれる塾のような存在がサポート校です。サポートする内容や登校頻度によっては通信制高校よりも多くの学費が必要となります。
- 特別支援学校 高等部は小学部・中学部と併設されているところもあり、エスカレーター式に上がってくる人も多くいます。就労に向けての訓練的な教育など、卒業後を見据えたカリキュラムと進路指導が期待できます。
- 小学部や中学部と併設されている特別支援学校 高等部に対して、高等特別支援学校と呼ばれる高等部のみの支援学校があります。企業への就労を目指すことに重点をおいたカリキュラムで、就職率は7割程度となっています。入学選抜もあり、比較的軽度の知的障害がある生徒が多い学校です。
- 大学や専門学校に進む場合は、高校卒業や特別支援学校高等部卒業などで得られる大学・専門学校入学資格が必要なので高校等の進路を決める際は注意が必要です。
高校等卒業後の進路
特別支援学校 高等部 卒業後の進路
特別支援学校 高等部を卒業(2022年3月卒業)したあとの進路を見てみましょう。
約1/3が企業等への就職、約1/3が障害福祉サービスを利用した就労事業所、約1/4が日中活動事業所へ進み、大学・短大・専修学校へ進学する人が1%いたことがわかります。
福祉型カレッジ
障害のある人の高校卒業後の進路の選択肢を広げるために、福祉型カレッジと呼ばれる大学に見立てた学びの場が増えてきています。
福祉型カレッジは正式な名称ではなく、特に決まった形もありませんが、障害福祉サービスの自立訓練(生活訓練)と、就労移行支援または就労継続支援B型を2年間ずつくみあわせた計4年間の学びの場が一般的です。最初の2年間は生活力や社会性を学び、3,4年目は就労に向けた訓練や学びを行うところが多いでしょう。
障害福祉サービスを利用しますので、子ども本人の所得が高額でない限り実費以外の費用はかかりません。
カレッジによっては本人の希望を叶えるために、就労先を一から開拓してくれるところもあります。
高校卒業後、生活力を身につけ、就労訓練をしてから就職したい人に向いていると言えるでしょう。
障害福祉サービスの自立訓練(生活訓練)と就労移行支援はどちらも一生のうちで原則最大2年間しか利用することができません。福祉型カレッジに4年間通うことで、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の利用可能年数2年間を使い切ってしまうと、就労したもののうまくいかないので就労移行支援を再度利用したいと思っても利用できない可能性があることには注意が必要です。
自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援B型についてはこちら
大学・短期大学・専門学校
障害のある学生への支援・配慮の状況を調査するために、日本学生支援機構が「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」を毎年行っています。
令和4年度の当調査によると、なんらかの障害がある学生数は合計約5万人で、全学生約325万人の1.53%に相当するとのことです。障害種別・学校種別毎の学生数は以下の通りとなっています。
調査結果報告書には、支援・配慮についての状況が書かれているので興味がある方は日本学生支援機構「令和 4 年度(2022 年度)大学、短期大学及び高等専門学校における 障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」をご覧ください。
特別支援学校 高等部は手厚い進路指導が期待できますが、経験の少ない先生などは、生徒を就労先・日中活動先にパズル式に当てはめてしまい、本人に合わずにすぐにやめてしまう場合があります。先生に任せきりにするのではなく、情報収集した上で先生と一緒にじっくり考えた方がいいでしょう。