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あんしんのもり

所得制限とは

親のお金

障害のある人への各種手当や障害基礎年金には、所得が一定以上になると受給できなくなる所得制限が定められています。ここでの所得とは収入ではなく、自分の所得が制限内なのか超えているのか簡単にはわかりません。また、収入が同じでも人によって所得は違ってくるなど所得の計算は複雑です。

ここでは所得の計算について解説した上で、収入を変えずに所得を減らして所得制限を回避する方法や、一時的な収入がある場合の注意点などについても解説していきます。

各種手当や障害基礎年金の所得制限

所得制限一覧

各種手当と障害基礎年金の所得制限の一覧表です。

難しい言葉が並んでいるうえに、そもそも所得と収入が違うなど所得制限は難解です。ひとつづつ紐解いていきましょう。

「収入=所得」ではない

所得とは、給与など収入そのものではなく、収入から控除とよばれる様々な引き算をしたものを指します。そのため、所得制限の金額を見ても、自分が制限内か超過しているかすぐにわからない人も多いのではないでしょうか。

所得税・住民税のもととなる課税所得を算出する際に収入から差し引くことも控除と言いますが、手当等での所得制限を見るための控除と、課税所得算出のための控除とは似ているものの一部違う部分がある点に注意が必要です。

所得の計算

所得は以下の計算によって求められます。

所得 = 収入 - 必要経費(給与所得控除等)- その他の控除

①収入

給与などの収入を指します。

②必要経費(給与所得控除等)

給与収入の場合の必要経費は収入に応じた”給与所得控除額”となります。例えば給与が600万円の場合の給与所得控除額は600万 x 20% + 44万=164万円となります。

給与所得の源泉徴収票にある「給与所得控除後の金額」(下記赤枠)が「収入-必要経費(給与所得控除等)」に該当しますので、自分で計算しなくても確認することができます。

③その他の控除

以下の控除項目のうち該当するものを控除します。

  • 給与または公的年金等の収入がある場合は給与所得控除/公的年金等控除に加えてさらに一律10万円を控除します。
  • 障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生、配偶者特別控除については年末調整をしていれば源泉徴収票に記載があるので該当する場合は控除します(上記源泉徴収票の青枠)。
    • 障害者控除は障害のある親族を扶養している場合に控除できますが、障害のある本人の所得を算出する際は控除できません。
  • 雑損控除、医療費控除、小規模企業共済等控除、長期/短期譲渡所得の特別控除については、確定申告で控除した場合に同額を控除することができます。
    • iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は小規模企業共済等控除に該当しますので、確定申告ではなく年末調整の「保険料控除申告書」で申告した場合も控除できます。
  • 所得税や住民税とは控除される項目や金額が違う部分がある点に注意が必要です。例えば所得税・住民税では控除できる生命保険料やふるさと納税(寄付金)は控除できません
    • 社会保険料は実額ではなく一律8万円の控除となります。障害のある本人の所得の計算では実額を控除します。

扶養親族等の人数

扶養している親族の人数によって所得制限額が変わります。

扶養親族、老人扶養親族、特定扶養親族の人数は年末調整していれば給与所得の源泉徴収票で確認することができます。(上記源泉徴収票の緑枠)

所得制限の対象者

手当を受給する人の所得だけでなく、受給する人と生計を一にする配偶者及び扶養義務者の所得も制限内に収まっている必要があります。

扶養義務者とは直系血族(血のつながりがある親族)のことで、親、子、祖父母、きょうだいなどが該当します。生計を一にする直系血族のみが対象となりますので、生計を別にする親族の所得は関係ありません。

所得制限の計算例

特別児童扶養手当の簡単な例を見てみましょう。

  • 給与収入が600万円、配偶者、15歳の障害のある子、20歳の障害のない子を扶養しています。
  • 給与600万円から給与所得控除164万円を引き、給与がある場合の一律控除10万円、障害のある子を扶養しているので障害者控除27万円、社会保険料の一律控除8万円を引いたものが所得391万円となります。
  • 所得制限は、3人扶養しているため573.6万円、20歳の子を扶養していることによる特定扶養親族加算25万円を加えて598.6万円となります。
  • 収入600万円は所得制限598.6万円を超えていますが、控除後の所得は391万円となり制限以下になります。

障害児福祉手当・特別児童扶養手当の所得制限:親の給与収入の目安

収入から所得を計算するのは少し複雑ですので、障害児福祉手当と特別児童扶養手当における親の給与収入上限の目安を記載しておきます。あくまでも目安であり、実際の所得は自身に該当する控除を適用する必要がある点にご留意ください。

所得制限ギリギリの場合の注意点

所得制限内にギリギリ収まっている場合は、少しの所得が増えることで制限額をオーバーして手当を受給できなる可能性があります。逆に、ギリギリ オーバーしている場合は、控除を少し増やすことで制限内に納めることができるかもしれません。

そのため、所得制限ギリギリの場合は、所得に含まれるもの、控除の調整の仕方について知っておいた方がいいでしょう。

所得に含まれるもの(例)
  • 給与所得・公的年金等所得(老齢年金や年金形式で受け取る退職金など)
  • 事業所得
  • 家賃などの不動産所得
  • 不動産などの譲渡所得
  • 雑所得(FX・仮想通貨売却益やフリマ販売益が20万円を超える場合など)
  • 競馬の払戻金や生命保険満期返戻金などの一時所得
  • 分離課税とならない退職所得(特別なケースのみでほとんどは分離課税)など
  • 総合課税を選択した配当所得(下記「含まれない所得」参照)

ギリギリ所得制限に収まっている場合、雑所得に該当する一時的な収入を得ることや、配当控除を受けるために総合課税を選択することで所得が増え、制限オーバーとなりかねないので注意が必要です。

所得に含まれないもの(例)
  • 株式等譲渡所得:株式・投資信託等の売買で利益が出た場合の所得
  • 分離課税の配当所得:証券会社で特定口座(源泉徴収あり)を選んでいる場合(申告不要制度)や、株式等の売却損と相殺するために確定申告する申告分離制度を選んでいる場合の上場株式や投資信託の配当金・分配金等
    • 配当控除を受けるために総合課税を選択すると所得に含まれます。
  • 相続や贈与で取得したもの

控除を増やして所得を下げる方法

控除の中には自分でコントロールできるものがあります。ギリギリ所得制限をオーバーしている場合などは控除を増やす検討をしてもいいかもしれません。

小規模企業共済等掛金控除

以下の掛金は小規模企業共済等掛金として全額控除することができます。

  • iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金
  • 勤務先の企業型確定拠出年金にマッチング拠出として個人で上乗せした掛金
  • 心身障害者扶養共済制度(しょうがい共済)の掛金

掛金にはそれぞれ上限がありますが、自分が掛金を増やすべき状況にある場合は、節税と手当の所得制限回避を兼ねて検討してみる価値があるでしょう。

医療費控除

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に生計を一にする世帯全員で支払った医療費等(治療代、薬代、交通費など)の合計が10万円を超える場合、超えた分から保険金等で補填された金額を除いた金額を、200万円を上限に所得から控除できるものです。(総所得金額等が200万円未満の人は10万円ではなく総所得金額等の5%を超える金額)

医療費控除の対象となる費用(例)

健康保険が適用されない費用も含まれます。

  • 医師、歯科医師による診療・治療費(健康診断は含まず)
  • 治療・療養に必要な医薬品(市販の薬も含む。ビタミンなど病気予防の薬は対象外)
  • 病院、診療所、介護老人保健施設、助産所などの入院費
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術(疲れを癒したり体調を整えるといった治療に直接関係のないものは対象外)
  • 保健師、看護師、准看護師などによる療養上の世話の対価
  • 診療のための通院費(自家用車のガソリン代・駐車料金は対象外。公共機関を使えない場合を除きタクシー代は対象外。)
  • 入院の際の部屋代や食事代(自己都合によるものを除く)
  • 治療用コルセットなど医療用器具等の購入代や賃借料

その他にもありますので詳細は国税庁のホームページをご覧ください。
No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁 (nta.go.jp)

国税庁のホームページ「確定申告書等作成コーナー」にある具体例やQ&Aも参考になります。
【確定申告書等作成コーナー】-医療費控除 (nta.go.jp)

控除を増やすことによる節税とは?

控除が増えると所得制限上の所得が下がるだけでなく、節税につながり得ます。

節税額は「控除額x税率(所得税と住民税両方の合計)」で計算することができます。

どの程度の節税になり得るか医療費控除を例にとって見てみましょう。

医療費控除による節税例
  • 世帯全員の医療費が年間20万円で、そのうち3万円が医療保険により補填された場合、17万円が自己負担分となり、10万円を超過した金額である7万円が医療費控除額となります。つまり、医療費控除により課税所得が7万円下がることになります。
  • 所得税率は課税所得額により変わりますが、例えば20%だったとすると、課税所得が下がった7万円に所得税率20%を掛けた1万4千円分の所得税が減ることになります。また、同じく7万円に住民税率10%をかけた7千円分の住民税が減ることとなり、所得税と住民税を合わせて2万1千円分税金が減ることになります。
  • 医療費控除を受けるには確定申告する必要がありますが、一度やり方を覚えてしまえばそれほど難しくはないので、医療費が10万円を大きく超えた場合は手当の所得制限とは関係なく節税の観点からやっておきたいものです。
  • いつもは医療がさほどかからなくても、急に大きな医療費が発生する場合もあり得るので、医療費控除に備えて医療関連のレシートは12月末まで保管しておいた方がいいでしょう。