障害のある人を育てている保護者が毎月掛金を納めることで、保護者が死亡または高度障害になると、障害のある人に対して一定額の年金を一生涯支給する公的制度です。
メリットが多い制度ですが、親の死亡時期と子どもの寿命によってトータルの支給金額が決まるなど損得勘定の予測は困難です。メリットと注意点を十分に理解してから加入した方がいいでしょう。
概要
- 加入できる人(親):65歳未満の健康で一定程度の障害のある人を扶養している人
- 毎月の掛け金:加入時の年齢に応じて1口 9,300円~23,300円
- 年金給付額:加入者(親)が死亡または重度障害になると、月2万円/口(最大2口まで)を障害のある人が亡くなるまで支給
加入要件
保護者の要件
障害のある人を扶養している保護者(父母、配偶者、兄弟姉妹、祖父母、その他の親族など)であって、次のすべての要件を満たす人
- 加入時の年度の4月1日時点の年齢が65歳未満であること。
- 特別の疾病又は障害がなく、生命保険契約の対象となる健康状態であること。(告知あり)
- 障害のある人1人に対して、加入できる保護者は1人。(例:両親共に加入は不可)
障害のある人の要件
次のいずれかに該当する障害のある人で、将来独立自活することが困難であると認められる人。(年齢は問いません。)
- 知的障害
- 身体障害者手帳を所持し、その障害が1級から3級まで
- 精神又は身体に永続的な障害のある人(統合失調症、脳性麻痺、進行性筋萎縮症、自閉症、血友病など)で、その障害の程度が上記と同程度と認められる人
掛金
掛金月額
掛金月額は、加入した年度の4月1日時点の保護者の年齢によって決まります。
掛金は、掛金免除の要件を満たすまで払い込む必要があります。(途中で脱退できますが、その場合年金は支払われません。)
加入後は年齢が上がっても掛金は上がりません。例えば、34歳の人が加入すれば掛金は9,300円のままです。
保護者の年齢 | 掛金月額(1口) |
35歳未満 | 9,300円 |
35歳以上40歳未満 | 11,400円 |
40歳以上45歳未満 | 14,300円 |
45歳以上50歳未満 | 17,300円 |
50歳以上55歳未満 | 18,800円 |
55歳以上60歳未満 | 20,700円 |
60歳以上65歳未満 | 23,300円 |
掛金免除の要件
次の2つの要件を両方とも満たした以後の月から掛金は免除されます。
① 年度初日(4月1日)の保護者の年齢が65歳となったとき
② 加入期間が20年以上となったとき
年金支払い
加入者(保護者)が死亡又は重度障害状態に該当した場合、1口あたり月2万円(最大2口)が支給されます。
ただし以下の場合は支給されません。
- 加入者(保護者)の生存中に障害のある子どもが死亡したとき(弔慰金が支払われます)
- 掛金免状となる前に制度から脱退したとき(加入5年以上で年数に応じた一時金が支払われます)
メリット
- 終身年金になる
- 子どもが亡くなるまで年金が支給され続けます
- 保護者の節税
- 掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象として全額を所得から控除できます。
- 特別児童扶養手当等の所得制限判定の際の所得から全額控除できるので、所得制限の回避につながり得ます。
- 受給する年金は非課税
- 所得税・住民税所得割が課税されません。相続税、贈与税もかかりません。
- 生活保護が減らない
- お子さんが生活保護を受給している場合、通常は収入分だけ生活保護が減らされますが、しょうがい共済により支給される年金は収入にカウントされません。
- 子どもが手続きしなくても受給できる
- 年金を受領し管理する「年金管理者」をあらかじめ指定しておくことで、年金を受給する障害のある人が手続きをする必要がなくなります。
注意点
- 途中でやめるとただの掛け捨て保険になる
- 掛金免除を満たす前に脱退すると少しの脱退一時金が支給されるだけです。
- 払い込み期間中に保護者が亡くなった場合は、それ以降お子さんに年金が支給されますので、掛け捨ての保険に入っていたことになります。
- 加入年齢により掛金総額が大きく変わる
- 途中で死亡することなく掛金が免除されるまで払い続ける前提で考えると、掛金総額は加入する年齢によって最小で346万円、最大で556万円と大きく変わります。1年加入のタイミングが違うだけで支払総額が50万円以上増える年齢がいくつかあります。ただ、万一のことはいつ起こるかわかりませんので、加入するタイミングを掛金総額シミュレーションだけで決めるべきではないでしょう。
- 子どもが先に亡くなった場合
- 子どもがもし先に亡くなった場合は保護者に弔慰金が少額支払われるのみです。
- 損するか、得するかはわからない
- 障害のある子どもが一生涯で受け取る年金総額は、保護者が死亡または重度障害になってから子どもが亡くなるまでの期間で決まります。掛金総額と受け取る年金総額を比べて加入する・しないを考えることは困難です。
- 例えば、30歳から65歳までの35年間における掛金総額は391万円となりますが、保護者が亡くなってから毎月2万円の年金を16.3年間受給すると391万円の受給となり、言い換えると元が取れたことになります。(掛金支払期間中の運用収益及び節税効果は考慮せず)
まとめ
- しょうがい共済で子どもに2万~4万円/月の終身年金を残こすことができる。
- 親の節税効果も期待できる。
- 長期間掛金を払うことが必要で、途中でやめると年金は支払われない。
- 掛金総額と将来の受給年金総額を事前に比べることはできず、得をすることもあれば損をすることもある。
- メリットと注意点をよく理解して加入すべき。