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障害のある子が障害年金をもらえるように今からしておくこと

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障害のために十分に働くことができない子にとって障害基礎年金は重要な収入源となります。障害基礎年金は20歳になったら申請することができますが、前もって準備しておくことでスムーズな受給が期待できます。

今から準備しておくべきこと

以下のような準備をしておくことで思い通りに受給できる可能性が高くなります。

  • 障害によってできないこと・困りごとなどの具体的なエピソードをメモしておく
  • 20歳の時に診断書を書いてもらう主治医を見つけておく
  • 診断記録や心理テストの結果などを保管しておく

このような準備がなぜ役に立つのかを、障害基礎年金の基本をおさらいしながら見て行きましょう。

障害基礎年金はいくらもらえる?

金額は障害の程度により1級と2級にわけられています。毎年改定されます。

障害基礎年金 2024年度金額

  • 1級 月額85,000円 (年額 1,020,000円)
  • 2級 月額68,000円 (年額 816,000円)
    ※2級の金額は老歴基礎年金を65歳から満額受け取る場合と同じ水準です。

障害基礎年金を受給している人は、年金に加えて年金生活者支援給付金をほとんどの場合もらえます。

年金生活者支援給付金 2024年度金額

  • 障害年金1級: 月額 6,638円 (年額 79,656円)
  • 障害年金2級: 月額 5,310円 (年額 63,720円)

障害基礎年金と年金生活者支援給付金を合わせると、1級で月額約9万1千円2級で月額約7万3千円となります。年金だけでは潤沢な収入とは言えないかもしれませんが、障害のある人の平均収入(障害者雇用(知的障害)11万7千円、就労継続支援A型 8万円2千円、就労継続支援B型 1万6千円程度)と比べると決して小さな金額ではないため、受給要件を満たすのであれば確実に受給できるようにしておきたいものです。

合わせて、等級についても、1級に該当する人は、2級ではなく確実に1級を受給できるようにしておきたいものです。今から準備しておくことが確実な受給につながっていきます。

年金をもらえる人と等級の決まり方

受給要件

一定の障害があり、障害の原因である病気やケガの初診日が20歳前である場合は、年金保険料を一度も払っていなくても20歳になった翌月から障害基礎年金を受給することができます。

知的障害は生まれつきの場合が多いため、誕生日が初診日となることが一般的で、20歳になると受給対象となり得ます。

ただし、年金保険料を一度も払わずに障害基礎年金受給する場合は、受給する本人の所得が一定以上になると支給が停止されます。所得の計算は複雑ですが、単身の場合だと給与収入600万円以上が目安となるでしょう。

一定の障害とは?

障害基礎年金を受給できる障害の程度は各障害別に定められています。ただ、知的障害と発達障害についてはかなり漠然なので、これだけを見て子どもの受給可否や等級を推測するのは難しいかもしれません。実際には、ここに書かれた基準に会うかを細かく見るために、医師の診断書等により判断されることになります。

働いていると障害基礎年金をもらえない?

就労していること自体が障害基礎年金の受給を妨げることはありません。仕事の内容や就労状況、受けている援助や職場でのコミュニケーション・対人関係の状況などを加味して総合評価されます。

支給と等級の決定

障害基礎年金は、申請したからと言って必ず受給できるものではありません。また、障害者手帳をもっているから必ず受給できるものでもありません。審査の上で支給・等級が決定されます。

審査は書類のみで行われるので、書類を正しく準備できるかどうかが受給及び等級を左右すると言っていいでしょう。書類の中でも、医師による診断書が最も重視されるため、現状を正しく反映した診断書を医師に書いてもらうことが不可欠です。

医師の診断書

障害基礎年金申請で提出する医師の診断書は、障害種別ごとにテンプレートが決まっており、知的障害と発達障害はどちらも「精神の障害者用診断書」が使われ、A3両面の1枚ものです。

診断書テンプレートの重要な部分を見ていきましょう。

おもて面「➉障害の状態」欄

おもて面の下左側「ア 現在の病状又は状態像」欄は、知的障害であれば軽度から最重度のうち該当するところに〇が入り、発達障害も該当するところに〇が入ります。

右側の「イ 左記の状態について、その程度・病状・処方薬等を具体的に記載してください。」欄は、状態を具体的に書くスペースです。ここに障害によりできないことや困りごとについてエピソードを交えて書くことで、状態が正確に伝わる重要な部分です。

診断書テンプレート おもて面
うら面「➉障害の状態- ウ 日常生活状況」欄

うら面の「日常生活状況」の中で、「2 日常生活能力の判定」と「3 日常生活能力の程度」は特に重要です。この二つの項目が障害等級の目安とされるためです。

診断書テンプレート うら面
日常生活能力の判定

日常生活能力の判定」とは、食事、清潔保持、金銭管理・買い物、通院・服薬、意思疎通、危機対応、社会性の7項目について、1人で生活した場合にどの程度できるかを4段階で判定するものです。

注意したいのはあくまでも「1人で生活するとしたら」であることです。

内容についても注意が必要です。例えば「(1)適切な食事」については、単に食事を一人で食べることができるということではなく、適度な量でバランスがいい食事を、準備も含めて自分1人でとることができるか?という点が問われます。また、「(2)身辺の清潔保持」の着替えについては、単に脱ぎ着ができるだけでなく、季節・気温に応じた服装を自分で選んで着ることができるか?などが問われる判定です。

他の項目についても同様に、単にその行為ができるかではなく、自分で考えて適切なことができるかという点が判定されます。

4段階の判定は点数化されます。左から「できる」が1点で、一番右の「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」が4点、その中間が左から2点と3点です。7項目の平均が日常生活能力の判定の点数になります。

日常生活能力の程度

日常生活能力の程度」は、(1)~(5)のうち該当するものが選ばれます。知的障害と精神障害(発達障害含む)によって基準が異なります。

日常生活能力の程度
日常生活能力の程度
うら面「➉障害の状態- エ 現症時の就労状況」欄

現症時の就労状況」欄には、雇用形態や勤続年数、給与等に加えて、「仕事の内容」と「仕事場での援助の状況や意思疎通の状況」を書くようになっています。

就労していること自体で障害基礎年金をもらえなくなることはありませんが、障害基礎年金を受給するには、ここに就労状況を正しく記入することが重要です。仕事の内容が単純で、周囲のこんな援助があるから働くことができているとか、コミュニケーション上の課題はあるが周りのこのような協力でできている等を正確に書いてもらう必要があります。

うら面「⑪現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄

ここは日常生活での活動能力や労働能力について書くスペースとなっています。

日常生活や働く上で、どんな困りごとがあって、どのような支援を受けているか等を具体的に書くことで全体像を理解してもらうことが可能となります。

正しく診断書を書いてもらうために

医師に診断書を書いてもらう上で、まずは医師に状況を正確に理解してもらう必要があります。正確に理解してもらうためには、抽象的な伝え方ではなく、具体的な事例を交えることで伝わりやすくなります。また、医師が診断書に具体的なエピソードを交じえて書くことで、審査をする人にも伝わりやすくなります。

医師に伝えるべきことは日常生活上のことや就労先でのことなど多岐にわたります。できないことや困りごと、支援が必要なことなどについてのエピソードを日頃からメモしておくことで、主治医に正確に漏らすことなく伝えることができ、その結果状態を正確に反映した診断書を書いてもらうことが可能となります。

メモしておくこと、医師に伝えることはいわばネガティブなことが多くなるので抵抗があるかもしれませんが、状況を正しく理解してもらうためと割り切って考えたほうがいいでしょう。

伝えるべきことはたくさんあるので、初診で全てわかってもらうのは難しいかもしれません。20歳の誕生日の3か月前から診断書を書いてもらうことができますので、その時点で診断書を書いてもらえる医師を見つけておき、できれば状況を数年にわたって伝えられると安心でしょう。

気をつけたいのは、主治医が小児科の場合、高校を卒業する頃に小児科も卒業する可能性がある点です。小児科の先生に診断書を書いてもらえるか、無理なら転院先を紹介してもらうなど相談してみるのがいいでしょう。

障害基礎年金は基本的に数年ごとに更新が必要で、更新の度に医師の診断書が必要です。その点も考慮して診断書をお願いする医師を検討してもいいかもしれません。

診断書は見てもいい?

診断書は障害基礎年金の支給を左右する非常に大事なものです。正確に伝えたつもりでも、医師が十分に理解していない可能性もあるので、できれば書いたものを見せてもらい、事前にチェックするのがベストでしょう。

それができない場合でも、年金を申請する前に診断書のコピーをとっておきましょう。診断書に封がしてあっても開封して問題ありません。認定されなかった場合に、社労士に診断書を見てもらうことができ、不服申立や再審査請求につなげやすくなります。

等級の決定

診断書に記載される「日常生活能力の判定」の点数と「日常生活能力の程度」の評価を組み合わせたものが等級の目安とされます。目安をもとに他の状況を考慮して総合評価されます。

  • 「日常生活能力の判定」とは、食事、清潔保持、金銭管理・買い物、通院・服薬、意思疎通、危機対応、社会性の7項目について、1人で生活した場合にどの程度できるかを1~4の点数で判定するものです。
  • 「日常生活能力の程度」とは、日常生活全般における制限度合いを5段階で評価するものです。
  • 「日常生活能力の判定」の平均点数と「日常生活能力の程度」の評価の組み合わせが等級の目安となります。
  • 目安をもとに、現在の病状・状態像、療養状況、生活環境、就労状況、その他の5つの分野を考慮して総合評価されます。
  • 就労していること自体が障害年金認定を妨げることはありません。仕事の内容や就労状況、受けている援助や職場での意思疎通の状況などを加味して総合評価されます。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン

※障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金には3級はありませんので、目安での3級は「障害基礎年金2級非該当」ということになります。

病歴・就労状況等申立書

年金の申請で、本人の状況を説明する書類として医師の診断書とは別に自分で記入する「病歴・就労状況等申立書」があります。今までの病歴と、日常生活や就労の状況などを記入します。

生まれつきの知的障害の場合は、病歴の記入を簡素化することができ、1つの欄の中に、特に大きな変化が生じた場合を中心に、出生時から現在までの状況をまとめて記入することが可能とされています。簡素化していいとは言え、昔のことを記入しなければいけないので、今までの診断の記録や心理テストの記録等を保存しておくと書きやすくなるでしょう。

日常生活や就労の状況などについては、医師の診断書と齟齬がでないように書くといいでしょう。

病歴状況欄
就労・日常生活状況欄

まとめ

十分に働くことができない障害のある人にとって障害基礎年金は大切な収入源です。年金の申請時期は20歳ですが、適切に受給できるように今から準備しておきましょう。

  • 障害によってできないこと・困りごとなどの具体的なエピソードをメモしておく
  • 20歳の時に診断書を書いてもらう主治医を見つけておく
  • 診断記録や心理テストの結果などを保管しておく