必要以上に残すと思わぬ結果が
お子さんにできるだけたくさんのお金を残してあげたいと思う親御さんは多いと思いますが、自分でお金をしっかり管理できて、自分で自由にお金を使うことができるお子さん以外は、以下の理由から必要以上に多額のお金を残すことをお勧めしていません。
浪費や詐欺に会うリスク
お金の支払いや銀行預金をおろすことを自分一人でできる人にとっても金銭管理は案外難しいものです。
驚くような金額を、驚くようなこと/モノに使っているケースを時々見かけることがあります。高額なものでなくても、コンビニやスーパーなど身近なお店で、欲しいものを欲しいだけ買ってしまうケースも耳にします。お金に対する感覚や価値観は人それぞれなので、お金をたくさん使うことが悪いわけではないのですが、収入や資産に見合った支出をしないと、いつかは破綻してしまいます。
お金がたくさんあると詐欺などに会うリスクも増えてしまうでしょう。最近ではネットで詐欺まがいの商品・サービスを売りつける手口や、金銭搾取目的の出会い系利用も増えているため、スマホやパソコンを操作できる人には危険な罠がいっぱい待ち構えていると言っても過言ではないでしょう。実際にそのような手口にひっかかった、ひっかかりそうになったところで家族が気づいて事なきを得たという話が増えています。
成年後見人がついた場合の問題
成年後見人への報酬は、保有する預貯金や有価証券などの流動資産の金額を目安に決められる場合が多いと言われています。裁判所により目安の基準は違いますが、概ね1,000万円を超えない場合は2万円/月程度ですが、それ以上の流動資産を保有していると3~5万円程度になることが多いとされています。成年後見制度を使い始めると途中でやめることはできないので、月々1万円の違いが累計では大きな違いになっていきます。
成年後見人は基本的にお金を守る立場にあるため、必要以上にお金を使わせてくれません。言い換えると過度な贅沢はできないことになります。結果として、必要以上にたくさんのお金を持っていたとしても使うことができないことになります。
使いきれないお金は国に納めることに
子どもが使いきれなかったお金は、子どもの相続人が相続します。相続人は、子、親、きょうだいなどです。相続する人がいない場合、残った財産は国庫に帰属することになります。
必要以上にたくさんのお金を残さないほうがいいことは分かったのですが、必要なお金がいくらかわかりせんし、わかったとしてもギリギリの金額では心配です。
必要なお金の正確な金額は誰にもわかりませんが、規模感を知っておくといいでしょう。
ギリギリの金額では心配なら、少し余裕を持った金額を残せばいいでしょう。大切なのは金額ではなくお金を管理できるように残すことです。
子ども名義の預金口座にお金をためない
親御さん、おじいいちゃん・おばあちゃんの中には、子どもにできるだけたくさんお金を残してあげようと、子どもの頃から事あるごとに子ども名義の預金口座にお金を入れる人がいます。これは、以下のリスクがありことからお勧めできません。
税務上のリスク
毎年少しずつお子さん名義の口座にお金を入れておけば、相続税や贈与税がかからないと考えがちですが、後になって相続税が課税されるリスクがあります。
年間110万円までの贈与には贈与税がかからないことを利用して、毎年110万円以内のお金をお子さんの銀行口座に入れていった場合でも、親御さんが亡くなったあとに税務署がそれを贈与と認めずに、相続財産とみなして相続税の課税対象となるリスクがあります。
贈与とは一方的に“あげる“行為ではなく、あげる人ともらう人が合意してはじめて成立する行為とされています。贈与が成立するためには、もらったお子さんが自分のものと認識して、自由に使える状況である必要があります。ですので、贈与の契約書を交わしていたことや、贈与されたお子さんが、銀行口座のお金を自分で使っていたことなどが証明できないと、贈与とは認められずに相続財産とみなされる可能性があります。
相続財産が一定額以上になると相続税がかかるため、税金対策のつもりで贈与したはずが税金対策にならず、子どもが相続税を納めるはめになり、それがきっかけで成年後見人が必要となるリスクもあることには注意が必要です。
親がお金を自由に使えなくなるリスク
お子さん名義の預金ではあるものの、親が貯めたお金なのでやむを得ない場合には親が使えると思いがちですが、自由に使えなくなるリスクがあります。
子どもが成人すると、預金口座のお金を動かせるのは本人のみであり、親であっても手を付けることはできなくなります。実際には、親がATMやネットバンキングで子どもの代わりにお金を引き出したり、支払ったりすることは広く行われており、子どものためにお金を動かしている限り処罰された例は聞いたことがありません。ただ、たとえ子どものためであっても、銀行は親が子どもの口座に手を付けることを許してはくれません。何らかの理由で親が子どもの口座のお金を引き出していることを銀行が知ることになれば引き出せなくなる可能性があります。また、子どもにお金の管理能力がないと判断されると成年後見人をつけることが求められる可能性があります。
銀行に気づかれない場合でも、両親のうち一方が亡くなった段階で成年後見人をつけているケースでは、お子さん名義のお金を親が引き出すことはできません。また、成年後見人がつく前に親御さんがお子さん名義の口座から預金を引き出していた場合、成年後見人が子どもの預金口座の入出金記録を見て、子どものために使っていないと判断されると返還を求められる可能性があります。
必要以上のお金がたまるリスク
必要以上にお金を残すべきでないことはすでに触れましたが、将来を思って貯めた結果、必要額を大きく上回るお金が残ることになるかもしれません。
親がお金を口座に入れなくても、障害児福祉手当などは子どもの口座に振り込まれますので放っておくと貯まって行きます。
親と同居しながら障害基礎年金を受給し始めると、お金がたまっていくことが多いものです。すでに子どもの預金口座にお金が貯まっている場合はなおさらです。
どうすればいい?
子どもの預金口座に必要以上の大きなお金が貯まらないようにするためには、親が意識的にコントロールする必要があります。
子どの将来のためにお金を貯めたいのであれば、子どもの口座ではなく親の名義で貯めておくやり方もあります。貯めたお金は、遺産や信託、生命保険などで子どもに渡すことが可能です。
障害児福祉手当や障害基礎年金が子どもの預金口座に貯まりすぎるのであれば、子どものために使う目的で引き出したり、生活費として家に入れてもらう金額を調整するなどして、適正な残高になるようにコントロールすることが可能です。ただし、言うまでもありませんが、障害児福祉手当や障害基礎年金は子どものお金なので、子どものため以外の目的で使うことはできません。
まとめ
必要以上のお金を残すと思わぬ結果が。。。
- 浪費や詐欺に会うリスクが増える
- 成年後見人報酬が高額になる
- 成年後見人は必要以上にお金を使わせないのでお金が残る可能性がある
- 使いきれないお金は、相続人がいないと国に納めることになる
子ども名義の預金口座にお金をため過ぎると。。。
- 贈与したつもりが相続とみなされ相続税がかかるリスクがある
- 親のお金と思っていても自由に使えなくなるリスクがある
- 必要以上に大きなお金が貯まってしまうリスクがある