親なきあとに向けて何から手をつけていいかわからず焦るばかりです。
一朝一夕にはできないことが多いので。頭の片隅に置きながら、何年もかけてゆっくり・じっくり考えて取り組んでいけばいいことがほとんどです。
信頼できる”支援の輪”を考える
お金を残すよりも、信頼できる”支援の輪”を残すことが大事です。信頼できる”支援の輪”があれば何とかしてくれます。しかしながら、信頼できる”支援の輪”を作ることは、お金を残すよりも難しいことかもしれません。試行錯誤しながら長い年月をかけて取り組むべきものでしょう。
親なきあとの住まいとサポート体制を考える
親なきあとの子どもの暮らしを想像しながら、住まいと、誰にどのような支援をしてもらうかを考えていきます。支援については、障害福祉サービス、成年後見制度の利用、きょうだい児とのオープンな会話などを検討していきます。
子どもに残すお金を考える
必要以上にお金を残してもあまり良いことはありません。また、単にお金を残すだけでなく、安全に、そして本人のために使えるような仕組みを整えておくことが重要です。
親の将来への備えを考える
老後資金を考える
親が老後資金で破綻すると子どもにお金を残すどころではなくなります。年金減少や物価上昇などに備えて早くから”お金が勝手に増える仕組み”を作っておくと安心です。
認知症になるリスクを考える
親が認知症になると銀行預金などの資産が凍結され、家族でも引き出すことができなくなる恐れがあります。障害のある子に経済的援助をしていた場合、認知症で預金が凍結されると援助を続けられなくなってしまいます。
親の認知症への備えとして任意後見や家族信託の活用などが考えられます。
任意後見
任意後見とは、判断能力があるうちに成年後見人を自分で選んでおいて、判断能力が低下した場合に財産管理と身上監護(契約手続等)をしてもらう契約を結んでおくことです。判断能力が十分でない障害のある人への成年後見は法定後見と呼ばれ、自分で後見人を選ぶのではなく裁判所が選任することが大きな違いです。
基準を定めて、家族の生活費を自分の財産から支払う旨を任意後見契約に入れておけば、任意後見人が自分(親)の財産から家族の生活費を支出することができます。ただし、成年後見制度はあくまでも被後見人(親)の財産を守ることに主眼が置かれますので、親の財産が家族の生活費を援助するに十分でないと裁判所あるいは後見業務を監督する任意後見監督人が判断した場合は、家族の生活費の支出をストップされる可能性がある点には注意が必要です。
また、裁判所および任意後見監督人が支出をチェックするために、いくら家族のためであっても柔軟な支出は難しくなります。例えば、被後見人(親)は子どもの結婚祝いに100万円渡すような人であったと任意後見人が知っていてお祝いを渡したいと思っても、裁判所または任意後見監督人と相談する必要があるでしょう。
家族信託
家族信託を使えば、あらかじめ信託契約に定められた範囲内で受託者は支出を行うことが可能です。家族信託は任意後見より柔軟な支払いが可能になると言えますが、受託者が管理できるのは信託財産のみであり、信託されていない財産には手を付けることはできません。また、身上監護がない点も任意後見との大きな違いになります。
死後の事務手続きを考える
親一人子一人の場合、親が亡くなったあとの事務手続きを子ども一人ではできないかもしれません。死後事務委任契約をしておくことで、死亡後に必要な事務手続き等を弁護士、司法書士、行政書士などの専門家がしてくれます。
死後事務委任契約では以下のようなことを委任することができます。
- 行政手続き:死亡届提出、健康保険証や介護保険証の返納、年金などの手続き
- 指定された連絡先への連絡
- 指定された葬儀、埋葬などの執行
- 遺品整理(含むデジタル遺品)
- 病院・施設等の退去手続き・費用の清算
- インフラやクレジットカード等の契約解約、費用の清算
まとめ
親なきあとに向けてゆっくり考えていけばいいこと
- 信頼できる”支援の輪”を作っていく
- 親なきあとの住まいとサポート体制を想像しながら少しずつ準備していく
- 子どもに残すお金と残し方を考えていく
- 親の将来への備えについて考えていく
- 老後資金が破綻しないように
- 認知症への備え
- 親一人子一人の場合は死後の事務手続きも